教員紹介 - 猪浦 智史

Q. 先生の研究・活動を教えてください
アディクションに関する調査研究活動を行っています。特に、アルコール依存症の親を持つ子どもの心理社会的特性に関心があり、これまで逆境的な小児体験を持つ子どものレジリエンスや、親の飲酒習慣が子どもの飲酒行動に与える影響に関する研究を行ってきました。これらのアディクション分野に興味を持ったことをきっかけに、現在は一般住民や中学生・高校生を対象とした飲酒・喫煙・薬物乱用に関する全国調査に従事しています。得られた知見からアディクションに悩む本人やその家族への支援に生かせるように研究を進めています。また、青少年に対する予防教育にも関心があり、学校で行われている薬物乱用防止教育についての研究にも取り組んでいます。
Q. この分野の面白さは、どんなところですか?
アディクションの研究分野に魅力を感じる理由は、生物学、心理学、社会学といった複数の学問領域が交錯する点にあります。アディクションは、単なる「意志の弱さ」や「自己制御の欠如」にとどまらず、脳の神経回路や化学物質、さらには遺伝的な要因にも関わっています。そのため、アディクションを理解するには脳科学的な視点からのアプローチも重要になります。さらに、アディクションは社会的な要因とも密接に関連しており、貧困やストレス、社会的孤立なども深く関わっています。このように、アディクションの研究は個人の心理的な問題だけでなく、社会全体の健康や福祉にも深く関わるテーマであるため、非常に広範で興味深いものです。治療法の開発や予防策の提案が進めば、社会全体にとって大きな貢献となることが期待されています。このような多角的なアプローチが、アディクションの研究分野を魅力的にしていると考えます。
授業紹介
精神看護、精神看護実践論、ヒューマンケア心理学
精神看護学、精神看護実践論、ヒューマンケア心理学を担当しています。これまでの精神科臨床および地域精神保健の実務経験を活かし、実践的な学びを提供することを心掛けています。精神科臨床での経験を通じて、患者の身体的・精神的状態の理解や症状への対応、コミュニケーション技術、精神的危機への対応方法など、実践的な知恵を授業に取り入れています。また、地域精神保健の経験を活かし、地域で生活する精神障がい者やその家族の実態やニーズ、社会資源の活用、地域連携の重要性についても学べるよう支援しています。病院での入院生活だけでなく、地域での生活を見据えた関わり方や、地域社会における包括的なケアの提供の必要性について理解を深めることを目指しています。
メッセージ
精神看護を学ぶことは、他者の心の健康を支える非常に重要な仕事です。私たちも、時には心の病に苦しんだり、弱ってしまうことがあります。精神看護を学ぶことで、心の病に悩む人々を支え、彼らが回復へと向かう手助けができるようになります。精神看護は、単に技術や知識を学ぶだけでなく、人と人との信頼関係を築く力も必要とされます。もし、あなたが人の気持ちに寄り添い、誰かの役に立ちたいと思うなら、この分野はきっと向いていると思います。また、精神看護の仕事は非常にやりがいがあり、日々成長し続けることができる分野でもあります。心のケアを学ぶことで、社会全体への貢献にも繋がり、自己成長も促されます。心の健康を守る一員として、精神看護の分野に関心を持っていただけると嬉しいです。