教員紹介 - 野口 代

Q. 先生の研究・活動を教えてください
認知症の方や高齢者が安心して楽しく過ごせるよう、「どんなときに不安になりやすいか」といったことを調べ、安心してもらえるような声かけや、かかわり方、暮らしやすい環境づくりをするための研究・実践を行っています。大学生と一緒に、「こうすると安心する?」といった実験的な授業を行ったり、介護現場での実践を通じて効果の検証もしています。実際の現場で役立つ研究や実践を行うことを何より大切にしています。そのため、研究成果は学会発表や論文だけでなく、現場向けのワークショップや地域講座などでも共有し、日々のケアに役立てる取り組みを続けています。介護者向けのインターネットのサイトなども作成していますので、さらに充実させ、全国どこからでも学べる仕組みを広げていきたいとも考えています。
Q. この分野の面白さは、どんなところですか?
この分野のおもしろさは、「ちょっとした工夫」で利用者の表情や行動が変わり、課題が少しずつ解決に向かう瞬間に立ち会えることです。たとえば、声のかけ方やサポートのタイミングを工夫するだけで、興奮や不安が和らぎ、穏やかな表情で活動を楽しんでもらえることがあります。その変化は、はじめは小さくても、徐々に生活全体に波及していくことがあります。無理のない現実的な方法で課題解決に近づけていくことは、本人にとっても支援者にとっても大きな意味をもちます。また、家族や介護スタッフと一緒にアイデアを出し合いながら支援方法を練り上げ、チームで成果を実感できることも、この分野ならではの魅力だと感じています。穏やかで楽しい生活を実現できるようになるのが、やりがいの1つです。
授業紹介
老人福祉論Ⅰ
「老人福祉論Ⅰ」では、高齢者や認知症の方、またその家族が安心して暮らすためのコツや仕組みを学びます。まずは、「どんな状況・場面で困りやすいか」を具体例で考え、必要なサービスや制度、介護の進め方を解説します。現場にはキレイごとでは済まないようなことも多々ありますが、授業ではそのような点についても、しっかりと考えていきます。時には介護施設の中の様子を見てもらい、暮らしや、支援、制度を実際に知るところから、最終的に自分たちでも「こうしてみよう」ということを考え、まとめるような実践型の授業につなげていきます。また、家族支援や支援者支援にも目を向け、家族や専門職との連携のあり方についても検討します。ICT(情報通信技術)などのテクノロジーの活用による支援や情報共有の工夫についても紹介し、これからの高齢者支援の在り方を多角的に考える力を養います。
高校生に向けて、メッセージ
日本は高齢化率がトップレベルに高い国です。そして、日本の介護はきめ細やかで丁寧な対応が特徴とされ、海外からも高く評価されています。さらに、ロボットやAI、ICTなど、先進的なテクノロジーを介護に活かす研究や取り組みも進んできており、日本はその分野でも世界をリードしています。こうした背景から、介護や高齢者福祉は、今後ますます日本の得意分野として発展していくと考えられます。
多くの国でこれから日本と同様の課題が始まりますので、その時に皆さんの支援をする力は国際的にも非常に重要になります。一見すると難しそうに思えるかもしれませんが、授業や実習を通じて、人との関わり方やケアの基本、現場の工夫などをひとつずつ学んでいけば、できることも増え、少しずつ自信がついてきます。ぜひこの分野について皆さんと一緒に学び、未来のケアのかたちを考えていけたらと思います。
著書
- よくわかる! 行動分析による認知症ケア(共著)
- チャレンジング行動から認知症の人の世界を理解する BPSDからのパラダイム転換と認知行動療法に基づく新しいケア(共訳)