心理学総合案内「こころの散歩道」/子ネコの道/学習心理学1
学習心理学 |
学習というと学校のお勉強を思い浮かべてしまいますが、心理学で言う「学習」は、もっとずっと広い意味です。私たちが経験を通して身に付けたものは、すべて学習です。
私が、いま服を着て、日本の文字を書いているのも、人と会ったらあいさつするのも、すべて学習によります。私の性格の大部分も、学習の結果です。もし私が、全く違う環境で育っていれば、今とはずいぶん違う性格の人間になっていたことでしょう。
子供が大人の前でふざけて歌ったり踊ったりする。それを大人が面白がってほめてくれるのと、怒られてしまう環境とでは、それは違った人間が育っていくことでしょう。
このように、人間の多くの部分は、学習によって作られます。だから、学習のメカニズムを知ることは、人間を理解するうえでとても大切になるのです。
そうは言っても、生まれつきの部分はあります。空腹になったら何かを食べたり、まばたきをしたりするのは、生まれつき(生得的)で、本能的なものです。
動物は、たくさんの本能的な行動を持っています。ウミガメの赤ちゃんが海岸から海へ向かうのも、クモがクモの巣を張るのも、生まれつきです。
人間は、動物に比べると、生まれつきの部分が小さく、その後の環境の中で学習した行動が大きくなります。
食べることは本能でも、こんな料理をこんなお店で食べたいなんて思うのは、学習の結果です。
パブロフ博士は犬の唾液の研究をしていました。ところが、研究を続けているうちに、えさを運ぶ助手の足音を聞いただけで、犬は唾液を流すようになってしまいました。
えさを食べたときに唾液が出るのは、生まれつきの「無条件反応」。
えさと一緒にいつも聞いていた足音だけで唾液が出るようになったのは、学習の成果で、「条件反応」といいます。
このような学習を条件付け(特に古典的条件付け)と呼んでいます。
(心の中で、うめぼしのことを考えて! うめぼし、ウメボシ、梅干。スッパイ、スッパイ梅干。わー、スッパイ、スッパイ。ほら、口の中に唾液が出てきませんか?)
ワトソンは、唾液を流すなんて行動だけではなくて、人間の複雑な感情も、条件付けによって説明できると、考えました。
まず、実験のために、となりから男の赤ちゃんを借りてきました。赤ちゃんは、怖いもの知らずです。幽霊も、鉄砲も怖くありません。恐怖を感じません。
人間が本能的に感じる恐怖の対象は、突然体の支えが無くなることや、大きな音など、限られています。
さて、この赤ちゃんが元気に遊んでいます。そこに、一匹の白うさぎを近づけます。赤ちゃんはうれしそうに手を伸ばします。そのとたん、「ガーン」と大きな音を立てます。赤ちゃんは、びっくりして、怖くて、大泣き。
これを何回も繰り返します。
すると、だんだん白うさぎが近づいただけで赤ちゃんはおびえて泣きだすようになりました。学習によって、恐怖の感情が条件付けられたのです。
さらに、この子は、白うさぎを怖がるだけではなく、白うさぎのように白くてふわふわしたものも怖がるようになりました。
小さな赤ん坊が、生まれて初めて病院へ行く。少しも怖がりません。ところが、押さえつけれれて、針を刺されたりする。すると子供は、病院の建物を見ただけで怖がり、お医者さんや看護婦さんを見たら、飛んで逃げようとするでしょう。
さらに、たとえば床屋さんのように、白い服を着た人がいて、かちゃかちゃと金属音がして、といった病院に似たところも怖がるようになるのです。
→以下、学習の心理学2へ続く
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