中高生の心理、大学生の心理、。アイデンティティー、モラトリアム、自分探し。ご一緒に考えましょう。
心理学総合案内「こころの散歩道」(碓井真史)/心理学入門/発達心理学4:青年期の心理(新潟青陵大学碓井真史)
3.2 こころの発達(2)
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この時期は、「自分さがし」の時期です。自分はどんな人間なのか。どんな性格なのか。何をやりたいのか。どんな職業につきたいのか(そのためにはどんな学校に進学するのか)。そして、自分は一体誰なのか。
進学や就職で悩まない人は、ほとんどいないでしょう。また、青年期の人たちは、性格テストなどが大好きな人が多いようです。自分が誰なのかを知ることを、自我同一性(アイデンティティ)を確立すると言います。
自分は、他の誰でもない、まぎれもなくユニークな自分自身であり、現在の自分が何者であるか、将来何でありたいかを自覚すること、つまり自分を発見することがアイデンティティの確立です。
自分は一体誰なのかという悩みは、経験したことのある人にとっては、とてもよく共感できる深刻な悩みです。しかし、体験がない人にとっては、具体的な進学や就職の悩みは理解できても、自分は何なのかなどという悩みなど、全く理解できないかもしれません。
今、これをお読みのあなたは、いろいろな年齢の方がいらっしゃるでしょうが、大変な悩みの末にアイデンティティを確立した方もいるでしょうし、あまり悩まないで、この問題を解決した方もいるでしょう。また、これから大きな悩みの中には入っていく人もいるでしょう。
☆自分探しは、ただ自分のことを考える作業ではありません。そんなふうに自分を探せば探すほど、自分のことがわからなくなるでしょう。そんな自分探しは、たいていは失敗します。若者の自分探しは、活動することです。勉強や部活や恋や遊びやけんかや、いろんなことを体験しながら、自分自身を見つけていくのです。
* * * *
自分を発見すると言っても、自分は役立たずのダメな人間だと感じてしまうとしたら、それはアイデンティティの確立とは呼びません。アイデンティティとは、社会の関わりの中で身につける自分の役割、自分自身の価値についての確信だからです。
人間は誰でも長所と短所がありますが、たとえどんな欠点があっても、それでも自分は価値のある人間だという自尊感情(セルフ・エスティーム)を持つことが、アイデンティティの確立だということができるでしょう。
アイデンティティの確立を先延ばしにすることを心理的モラトリアムといいます。こういう人たちをモラトリアム人間ということもあります。モラトリアム人間などというと、あまり良くない意味で使われることがあるようですが、この考えを最初に述べたエリクソンは、悪い意味では使っていません。
社会が成熟し、豊かになったからこそ、青年期(または学生時代)が長くなり、人生の重大な決定をする前に、いろいろと考えたり、試したりすることができるのです。その結果、より良いアイデンティティの確立ができれば、それは良いことです。アイデンティティの確立とは、別のことばで言えば、いろいろな可能性を切り捨てることとも言えます。
たとえば幼稚園に行っている私の子ども達は、大きくなったら、うどん屋さんになりたい、正義の味方ビーファイターになりたい、ウルトラマンのガッツの隊員になりたい、宇宙飛行士になりたい、サンタクロースになりたいと、いろいろなことを言います。何にでもなれると思っているのです。これは、子どもとしてごく普通のことであり、良いことです。高校生でも、声優になりたい、漫画家になりたい、看護婦になりたい、プロ野球選手になりたい、大学に行って弁護士になりたい、医者になりたい、いろいろなことを思うでしょう。夢を持ち、大きな可能性を信じることはすばらしいことです。
でも、小さな子どものように自分は何にでもなれると単純に信じることはできません。なりたい職業全部につくことはできません。どれかをあきらめ、どれかを切り捨て、自分の道を選ばなくてはなりません。
結婚相手を選択するのも同じです。アイデンティティの確立とは、時には、他の可能性を切り捨てることになるので、それでとても辛い作業になるのです。だから、アイデンティティの確立を先延ばしにするモラトリアムがあるのです。昔の社会なら、とっくに社会の一員としての責任を追わなくてはならない年齢になっても、もうすこし準備期間を長くしようというわけです。
☆可能性を切り捨てるとは、ただ何となくあきらめるのことではありません。意思をもって断念し、別の新たな一つの道を選び取る作業です。
モラトリアム自体は、悪いわけではないのですが、現代のモラトリアムは、昔とは質が変わってきたようです。
昔のモラトリアム人間たちは、強い半人前識を持っていました。そして、一生懸命努力して、早く一人前になりたいと思っていました。自分はまだ、見習いだが、早く親方のような立派な親方になりたいとか、早く社会にでたいとか、思っていたわけです。
また、修行の期間や学校に入ることを認めてくれた親や社会に対して、申し訳ないという思いと、感謝の思いを持っていました。ところが、現代のモラトリアム人間たちは、自分の今の生活を当然だと思っています。親から仕送りを受けることを申し訳ないとは思わず、当たり前だと思うのです。親からの仕送りが少し送れただけで、親が当然の義務を果たさなかったと怒る学生もいるでしょう。
また、半人前だという意識がありません。汗水たらして働いている、サラリーマンや主婦を見たときに、なんてくだらない意味のない生き方だ、自分の今の生き方の方がずっとすばらしいと思ってしまいます。
だから、早く一人前になって社会にでようとは思わず、いつまでも親の世話になりたい、できるならずっと学生でいたいと考える青年もいるのです。昔の青年と比べて、今の青年の方が何もかも悪いなどとは、決して思わないのですが、せっかく与えられた貴重なモラトリアム時代を生かせない人たちは少なくないかもしれません。
(もっとも、私自身、苦学生というわけでなく、30才まで学生(大学院生)でしたから、あまり説教臭いことは言えません。よくご近所の方などに「まだ学校いってるの?」なんて言われていました。)
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補足
現在,中学校でスクールカウンセラーをしています。このページは入門的な内容でしたが,さらに様々な問題につてい、当サイト内で扱っていきたいと考えています。(2001.10.25)
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