心とは何か
心理学総合案内「こころの散歩道」/心理学入門講座子ネコの道/2、心理学史(新潟青陵大学碓井真史)
2 こころとは何か
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心理学は、若い科学です。たしかに心理学のもとをさかのぼれば、大昔から人間は人間のこころについて考えてきたのですが、科学としての心理学の歴史は、ほんの100年ほどです。心理学の歴史は、こころとは何か、心理学は何を研究したらよいのかを迷い続けた歴史です。
科学としての心理学のスタートでは、こころは「意識」だと考えました。自分の意識を注意深く分析して、どんな感覚や記憶などから成り立っているのかを考えようとしました。こころとは、意識であり、意識とは、様々な感覚要素の集まりだと考えたのです。
この最初の科学的心理学の考え方に、いろいろな方向から反論がでる形で、様々な心理学理論が生まれました。
私たちは、心の中を見ることはできません。あの人は優しいこころを持っているといっても、そのこころを見たわけではありません。優しい行動をとっているのを見て、優しい人だと判断しているのです。
そこから、直接観察することのできないこころを研究するよりも、外に現れる行動を研究するべきだという考えが生まれました。人間は外からどんな刺激を受けたら、どんな反応をするかを研究しようというわけです。
音楽を聴くときに音を1オクターブ高くして聞いても、メロディーは変わりません。ひとつひとつの音という要素は全く違うのに、それでも同じ曲だとわかります。人間のこころをバラバラの要素にしてしまっては、全体は理解できないという考え方です。
人間のこころの中で意識できる部分は、ほんの少しで、意識できない部分が多いのだという考え方です。この無意識の働きで、普段の行動も左右されたり、こころの病気になったりするというわけです。
この考え方が、現代人の常識かもしれません。脳の研究は、すごい勢いで進んでいます。脳の細かい部分の働きについては、ずいぶんわかってきました。しかし、どのようにして脳全体で、「私」という意識や「こころ」が生まれるのかは、やはり謎のままです。
現代の心理学は教科書の中では「行動の科学」だといわれています。こころの科学ではないのです。ただ、行動という意味を以前のような狭い意味には使っていません。行動からこころのメカニズムを推論することは盛んに行われています。また、同時に無意識を重視する考え方も、心理学の大きな柱として存在しています。
しかし、それでも心理学は行動の科学です。心理学が科学(自然科学)であることを目指そうとするとき、どうしても行動という客観的なものが必要になってきます。平凡社が発行している「心理学事典」というこの種のものでは一番ぶ厚い本があります。この本の目次にも索引にも「こころ」という言葉はありません。「精神」もありません。「行動」は目次にあります。
そうはいっても、やっぱり心理学は、「こころの科学」です。私たちは、医学や生理学的に人間を理解するだけでは、満足できないのです。私たちが人間のこころについて考えるとき、現代心理学は大きなヒントを与えてくれるでしょう。
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碓井真史(うすいまふみ) 新潟青陵大学
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