山手線の駅で、ホームから落ちた人を助けようとして、二人の男性が命を落としました。マスコミからも、市民からも、大統領や総理大臣からも、死を悼み、勇気を讚える声が届いています。 一つの出来事に対して、あまりにも過剰な反応をすることは基本的には賛成できないのですが、しかし、私も多くの見なさんと同じように、このお二人は大変りっぱな方だと思います。 さて、人を助けるような行動を心理学では「援助行動」とか、「愛他行動」と言っています。人間は結局自分がかわいいのだといった見方もありますが、一方で、自己犠牲的な援助行動も起こせるのが人間です。実は人間だけではなく、他の生物にも見られます。 たとえば、サルも、空腹の仲間にエサを分ける行為などが見られます。人間には、教育とか、宗教とか、理想といったものがありますが、それ以前に、人間にも他者を助ける気持ちが備わっていると思います。 ただ、援助行動が起こりにくい「環境」があります。人口密度の高い都会などがそうです。大勢の人がいて、刺激に満ちた環境では、緊急事態に気づかないときもあります。 気づいたとしても、大勢の人がいると、一人ひとりの心の中で、自分が助けなければならないという責任感がめばえにくく、援助行動がおきにくいのです。(今回は、それにも関らず、援助行動を起こすことができました) ・子どものころ、電車にひかれそうになったことがあります。電車が近づいてくるのはわかるのですが、頭が真っ白になって、動くことができませんでした。(電車が止まってくれたので、助かりました) ・ずいぶん前の話ですが、友人の家族が、ホームから落ちて、電車にひかれて亡くなりました。自力でホームに上がろうとしたそうですが、上手く上がることができないうちに、電車が来てしまいました。 ・私が子どものころに目撃した出来事です。上野動物園の中を走るモノレールの駅で。モノレールが入ってきたときに、小さな子どもがよろよろと歩いて出てきてしまいました。このままではひかれてしまいます。そこにいた人たちは、危ない!と思ったのですが、とっさに何もできませんでした。 次の瞬間、駅員さんがサッと走り、子どもを抱きかかえて、助けました。勇気ある行為です。そして心理学的に解説すれば、人はその場所が自分で管理し、守らなければならない場所だと自覚していると、援助行動を起こしやすいのです。 ・人は良い気分の時は援助行動をしやすく、いやな気分の時には、援助行動がおきにくいことも心理学的にわかっています。 |
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『人を助ける心―援助行動の社会心理学 (セレクション社会心理学 (7))』
『思いやりを科学する―向社会的行動の心理とスキル』
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