大学からのお知らせ

2021年度 新潟青陵大学短期大学部 卒業式祝辞

2021年度卒業式祝辞の様子

 新潟青陵短大卒業生の皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。そして、今日巣立っていかれる方お一人おひとりを手塩にかけてお育ていただいた保護者の皆さま、おめでとうございます。皆さまがこれまで発揮された愛のお力に改めて敬意を表し、お祝いを申し上げます。

 卒業生の皆さんは今、どんな気持ちでこの卒業式に臨んでいるでしょうか?皆さんの短大生活2年間は丸々新型コロナウイルスの感染拡大期と重なってしまい、「短大生活を存分に謳歌する」というわけにはいかなかったと思います。そんな中でも、皆さん方は人間総合学科・幼児教育学科で粘り強く勉学に励まれ、それぞれの専門性を身につけると共に、スポーツ・文化などのクラブ活動やボランティア活動にいそしんでくれました。また、青陵の教職員たちも、学生の皆さんとのお約束である「青陵プロミス」=「自分だけの専門性を『活かす力』、変わりゆく社会を『生きる力』。この二つの力を育む学び」を胸に刻み、日々実践に努め、皆さん方の育ちをサポートしたと思っています。

 先ほど「変わりゆく社会」と申し上げましたが、コロナ禍に加え、今はロシアのウクライナ侵攻が世界を揺るがしています。また、6日前には福島・宮城などで震度6強の大きな地震が発生しました。まさに「予測不能な時代」を実感させられます。ただ、この社会や国際情勢の大きな変化は、形を変えながらも常に続いてきたようにも思え、私も自らが学園で学び、社会に出る頃の状況を思い出してみました。

 私は昭和23年(1948年)生まれです。第二次世界大戦・太平洋戦争が終わった後に生まれた私たちの世代は「団塊の世代」と呼ばれ、日本の歴史の中でかつてないベビーブームの時代、出生数が膨れ上がった世代だったのです。その結果、小中高の学校生活は常に「超過密」で学校整備が間に合わず、プレハブ校舎で学ぶことが当たり前でした。高校に入学した昭和39年には「新潟地震」という大災害にも見舞われました。

 その後、東京の学園で学んだのですが、そこでは「学園紛争」が待ち受けていました。「全共闘世代」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「今の社会の理不尽さ」や「ベトナム戦争」に我慢がならない「怒れる若者たち」が全世界に出現し、時の政府・権力者たちに抗議の声を挙げました。日本中の学園に学生運動が広がり、武力闘争が展開されました。全共闘に代表される学生たちと機動隊の間で「市街戦」と言われるほど激しい衝突が繰り返されました。私は全共闘の過激派や機動隊との衝突に巻き込まれ、逃げ惑った日々が忘れられません。そんな中でも私たちはいろいろな場で社会を生きるすべを学び、二度にわたるオイルショックやバブルの到来と崩壊などを体験してきました。

2021年度卒業式祝辞の様子

 こう振り返ると、時代はいつでも予測不能なのです。問題は、日本がオイルショックで省エネを学んだように、「その混乱の中で何を学ぶのか」だと思います。2011年3月11日に起きた大震災の時、新潟市は救援先遣隊を仙台市に派遣しました。翌未明に仙台市役所に到着した先遣隊長は、大津波の経験こそありませんでしたが、新潟県内で7・13水害や中越大地震、中越沖地震の救援経験があるベテランでした。彼は、当時の奥山仙台市長に向かい合うと、「これから12時間で起きうることはこれ」「24時間以内に仙台市がやるべき重要なことはこれ」と時系列で対応策を説明しました。当時、災害の経験があまりなかった仙台市にとって、「闇夜に光明を見出すようなアドバイスだった」と奥山さんは振り返っています。彼はそれから仙台市のすべての対策会議に出席を要請され、2週間、新潟に帰れませんでした。「3度の災害救援の経験」を彼は、「災害のお陰」として最大限に活かしたのだと思います。

 新型コロナウイルスの感染でも同じことが言えるのではないでしょうか。コロナ禍は世界に大変な災厄をもたらしましたが、一方で「コロナのお陰」で気づいたことも数多くありました。私はコロナ前までは何となく「日本の医療は世界トップ水準」とか、「日本は何でも作れるモノ作り王国」とか思っていましたが、コロナ禍でそれは幻想だったことに気づかされました。コロナ感染が広がると病床はあっという間にひっ迫しましたし、マスクや医療器具など多くのモノが日本では調達できませんでした。ワクチンでも日本は、欧米の開発したワクチンにお世話になるだけでした。「コロナのお陰」で、私たちは「世界における日本の位置」に気づいたのです。

 「コロナのお陰」はほかにもあります。東京に代表される「密集・過密による繁栄」がいかに危ういものであるか―このことにも気づきましたし、顔と顔を合わせずとも、リモートでこんなに容易に意見交換ができ意思疎通が図れることにも気づきました。「日本の薄っぺらな常識」も次々と覆りましたよね。

 コロナ禍を機に、世の中が大きく変わりだしています。例えば、新潟市にUターン、Iターンする企業人が増えています。スマホ・アプリの分野で全国的にも知られるフラー株式会社の渋谷修太会長(会長と言ってもまだ30代半ばなのですが)、渋谷会長は子ども時代を過ごした新潟市にUターンし、本社も新潟市に移してくれました。「新潟は通勤時間が短く、四季のはっきりとした自然の中で人間らしく暮らせる。子育てに向いているし、ビジネスで不利な点は何もない」と渋谷さんは話しています。コロナ禍で価値観が大きく変わってきているのです。

2021年度卒業式祝辞の様子

 「人間らしい暮らし」へ、価値観の見直しも進んでいます。その契機となる一つがアウトドアです。「ソロキャンプ」などのアウトドア活動が脚光を浴びる中で、「人生に野遊びを」と人間性回復を呼び掛けてきた三条市の「スノーピーク」は、コロナ禍の中で「過去最高益」をたたき出しています。また、新潟で長く活動しているお笑い集団「NAMARA」は、お笑いやエンタメで社会課題に向き合う取り組みで全国的に注目されています。アウトドアやエンタメには「人間性回復」を促す力があることに新潟はいち早く気づきました。コロナ禍を契機に、真の豊かさを求める「ポストコロナ時代」を切り拓く必要があります。

 世界を揺るがしているロシアのウクライナ侵攻では、「情報操作」や「世論誘導」が大きな問題になっています。「フェイクニュース」や「薄っぺらな常識」を見抜く力はどう養われるのでしょうか?実はそれを見抜く力が「教養」であり、「専門性」なのです。青陵短大で学んだ皆さんは2年間、「変わりゆく社会を生きる力」と「自分だけの専門性を活かす力」を育んでこられました。それこそがこれからの「予測不能な時代」を生き抜く「実学の力」と思います。青陵短大で育んだ「実学」を活かし、これからも人々に寄り添いながら、自らの人生を豊かなものにしていってほしいと強く願っています。

 最後にもう一言申し上げます。世の中がどんなに変化しても、青陵学園はいつまでもあなたたちの「ホーム」です。これから社会に出たり、さらに学びを深めたりする中で迷うこともあるでしょう、そんな時は保護者の方だけでなく、学園の先生方や友人たちとも相談してほしいと思います。それは青陵で学んだあなたたちの当り前の権利だからです。

 皆さん方のこれからの人生が幸多きものであることを祈念し、餞の言葉とします。

2022年3月22日
新潟青陵学園 理事長
篠田 昭