心理学総合案内「こころの散歩道」

98.6.24 大学連携講座「心理学と現代社会」こころ学のススメ           
見附市中央公民館

病む社会と少年犯罪を考える

新潟青陵女子短期大学 碓井真史
http://www2.n-seiryo.ac.jp/TEACHER/usui/index.html


神戸小学生殺害事件の衝撃


・私たちが感じたこと

少年の恐ろしさ・精神障害の恐ろしさ・少年法の問題性・社会、学校、家庭の問題
「精神を病んだ恐ろしい少年が凶悪な犯罪を犯した。その原因として、少年がいた街や学校や家庭の問題がある。そして、少年犯罪への罰は軽すぎる。」

・学んで欲しかったこと

 確かに恐ろしい凶悪な事件だった。しかし、少年を厳罰に処すだけでは問題は解決しない。同様の犯罪は防げない。むしろ精神障害や少年非行への理解を深めることが必要。少年法や家庭裁判所への関心を高めよう。社会、学校、家庭などの環境が、事件の直接の原因ではないけれども、この機会にみんなで考えていこう。


少年犯罪は、増加、凶悪化?


 「少年犯罪は増加、凶悪化している、だから、少年法を改正し、少年にも厳罰を加えよう!」こんな意見をよく聞きます。しかし、犯罪白書を見ると、少年犯罪が増加、凶悪化しているということは、ありません。

 交通関係以外の統計を見ると、現在の少年犯罪が特に増加しているとは言えません。
殺人、強盗、強姦などの凶悪な犯罪は、この20〜30年の間にむしろ大きく減少しています。かつては、今の数倍の少年凶悪犯罪が発生していました。

 ただし、ずっと減少していた少年犯罪が最近は下げ止まったように見えます。また、少年による路上強盗などが増加傾向にあるなど、この数年に限って言えば、増加、凶悪化の兆しも見えます。

少年犯罪の変化


 大局的に見た場合、少年犯罪は増加しているわけでもなく、凶悪犯罪も減っていますが、少年たちの犯罪の中味が変わってきたように感じます。

・「遊び型非行」気軽な少年犯罪者達
 放置自転車の乗り逃げ(横領罪)が大きく増加しています。路上強盗なども、ほんの思 いつきで実行する少年たちがいます。

・歪んだ家族関係
 殺人事件が減っている中で、親族殺人は増えています。

・「いきなり型非行」
 以前なら、いわゆる不良少年たちが犯していた犯罪を、今は非行歴のない「普通の子」が犯してしまいます。

・弱者への攻撃
 強くて乱暴なもの同士の争いではなく、ホームレスや、すでに降参しているいじめられっ子など、弱者への攻撃が目立ちます。


非行の心理


 大人の犯罪とは違い、非行は、少年たちの心の叫び、SOSです。非行少年達は、強烈に愛を求めていながら、それを表現することがとても下手な人たちです。

 心の中の問題が「心」に表れれば、ノイローゼなど心の病になります。心の問題が「体」に表れれば、心身症など体の病になります。心の問題が「行動」になって表れたのが、非行です。

 人は愛を得るために問題行動を起こすことがあります。愛する人に傷つけられたとき、自分で自分を心や体や将来を傷つけるような問題行動を起こすこともあります。

非行少年の特徴

・心の思いを言葉で表現できず、行動に表してしまう。

・豊かな愛を受けなかったために自尊心が低い、自分を愛せない。人生を大切にできな  い。

・溺愛され、厳しさが足らなかったために我慢ができなかったり、強い自我が育っていな かったりする。

・厳し過ぎるしつけや規制を受けたために、歪んだ道徳心で自分を押さえ込みすぎて、そ して爆発してしまう。

・困難を乗り越える強さがない。それまで「良い子」で生きてきても、困難を経験し挫折 したたときに、心理的パニックを起こしてしまう。

・親の期待が強すぎ、要求が高すぎ、さらに期待に応えないときには愛を与えない場合。 子どもは努力するが、それでも期待に応えられないときには、子は親の期待する人間像(道徳的で立派な人)とは正反対の人間をモデルにして成長し、親に復讐する。(攻撃が 直接自分自身に向くと自殺になります。自殺は、もっとも効果的な親への復讐です)

非行のメカニズムのまとめ

・愛が足らない⇒愛や注目を求めて非行を行う。
・溺愛⇒自分をコントロールする力がないために、反社会的なことをしてしまう。
・期待が高すぎる⇒つぶされてしまい、親への復讐として非行を行う。
・困難を体験していない⇒挫折に耐えられず、非行を行ってしまう。


健全な子どもの成長のために
   「甘えさせる。でも、甘やかさない」


・無条件の愛で包む

 「愛」をエサにすれば、子どもを強力に操ることができます。しかし、副作用もあります。むしろ、無条件の愛を与えましょう。深く愛されたとき、自分を愛することもでき、人を愛することもできます。自分をコントロールし、犯罪への誘惑に勝つこともでき、叱られたときにも、正しく受け止めることができます。

・適切な規制を加える

 適切なしつけがないと強い自我が育たたず、自分の思いと社会のルールとの間で調整をつけることが難しくなります。

・子どもの自律を支援する

調査によれば、非行少年達も罰を避け、ほめられようとしています。しかし、このような「他律的」な道徳心ではなく、賞罰によらない「自律的」な道徳心が必要です。


子どもと現代社会


 近年、たしかに凶悪な犯罪が目立ちます。しかし、少年の行動を見て厳罰を与えるだけでは、少年の更生のためにも、再犯を防止し、治安を維持するためにも、逆効果です。ただ罰を与えるだけでは、ますます自暴自棄になり、社会を恨み、成人の犯罪者になる危険があります。
 少年の心を見て、非行の理由を理解しようとすることで、少年自身が反省し、自分の人生を大切にするようにしなくてはなりません。

 凶悪少年犯罪者の人生を見ると、ほとんどの場合、とても傷つく体験を繰り返しています。だからといって犯罪を認めるわけではりませんが、もし誰かがどこかで助けていたら、少年の人生も、加害者の人生も変わっていたでしょう。

 子どもが愛で包まれて、子どもらしく、伸び伸びと生きられる社会。少年たちが自分の能力を生かせて、そして思春期の反抗心をもしっかりと受け止められる社会。そんな健全な社会が望まれます。子どもを押しつぶし、ただ厳罰を与えようとする社会は、病んでいます。


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