心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座) / 犯罪心理学:心の闇と光)/ 兵庫・尼崎の遺体遺棄事件:暴力・洗脳・マインドコントロール

兵庫・尼崎の遺体遺棄事件の犯罪心理学

暴力・洗脳・マインドコントロール

2012.10.23(加筆10.25)

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兵庫県尼崎でコンクリート詰め遺体が発見され、主犯格の女(66)と共犯の親族が逮捕された(2012年10月)。ところが、その後続々と周囲から遺体が発見され、行方不明者も複数いることが判明。この女が複数の家庭に入り込み、多くの財産と命を奪ったのではないかととの報道が続いている。女は容疑を否認している。2012.10.23
兵庫・尼崎の遺体遺棄事件(Yahoo!)

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なぜ、逃げなかったのか:暴力、洗脳、マインドコントロール

ずっと見張られていたわけではないのに、なぜ逃げなかったのか。なぜ助けを呼ばなかったのか。そう思うのは、今冷静で安全な場所にいる私たちだからです。人は、圧倒的な暴力や恐怖の前では、無力になってしまうほうが普通でしょう。
たとえば、暴力で支配されてきた監禁事件の被害者は、ずっと鎖でつながれていなくても、逃げることができなくなってしまいます。警察が助けにいたときでさえ、部屋から出ることを躊躇することがあるほどです。人は、心が縛られてしまえば、鎖でつながれなくても、逃げられなくなるのです。
心を縛る方法として、圧倒的な暴力(恐怖)や、洗脳、マインドコントロールがあります。
*今回のケースを、ストックホルム症候群で語る人もいるようですが、ストックホルム症候群は、人質事件で周囲を警官隊が取り囲むような状況で生まれるもので、今回のケースは違うでしょう。


暴力、洗脳、マインドコントロール

激しい暴力を受けることで、人は戦意を喪失します。たとえば、脱出しようとしたために死を覚悟するほどの激しい暴力を受ければ、二度目の挑戦は難しいでしょう。人は無力感に陥るのです。
洗脳は、暴力的な方法と一時的なやさしさの療法を使った人の支配方法です。DV加害者も似たようなことをします。激しい暴力の後、やさしくされる。ただし、命令に背けばまた恐ろしい恐怖が待っている。この繰り返しで、人は精神を支配されていきます。
マインドコントロールは、暴力的な方法は使わず、言葉巧みに人々の心と行動と思想と感情を支配する方法です。
冷静に見れば、屁理屈なのですが、彼女は非常に言葉巧みにマインドコントロールを行っていたようです。
食事、排泄、睡眠など、様々な行動のコントロールも行います。行動のコントロール、恐怖による感情のコントロール、屁理屈による思考のコントロール、こうしてマインドコントロールが進みます。
恐怖の中で、加害者として家族に暴力を振るう。暴力が正しいと思わせるよう誘導。恐怖と罪悪感の中で、犯罪者となってしまった被害者たちは、行き場を失い、さらに支配関係が強まったことでしょう。
マインドコントロールとは何か


どのような人が罠にかかりやすいか

毒別に弱い人、おろかな人が罠にかあkるわけではありません。オウム真理教に入信してしまったのは、むしろ優秀で正義感のある人々でした。マインドコントロールの被害を受けたオセロの中島知子さんも、むしろ賢く強いタイプの人でしょう。
特別に危ない人がいるわけではありません。どんな人にも危険性があります。空き巣のプロにかかれば、どんな家でも侵入されてしまうように。
その中でも、特にまじめで誠実な人ほど要注意です。彼らは、そのまじめさや思いやりに漬け込みます。また、人は不安になったときに、他者からの説得に乗りやすくなるでしょう。


今回の尼崎の事件は、極めて稀なケースか:どこにでもある個人カルト

たしかに、これほどの犠牲者が出る事件は、めったにないでしょう。類似事件としては、北九州一家連続監禁殺人事件が思い出されます。

事件にはめったなくても、しかし、不法な人間が家庭に入り込み、財産や人生を奪うケースは、報道されなくてもたくさん生じています。圧倒的な暴力を武器にする人もいれば、洗脳やマインドコントロールを使う人もいます。
洗脳やマインドコントロールを使うカルト(破壊的カルト)の中には、巨大な組織もありますが、数名の人だけを対象とする「少数カルト」(「個人カルト」)と呼ばれるものもあります。さらにカルトは、宗教カルトだけではなく、占い、経済、健康、心理(自己啓発セミナー)など様々な形があります。
たとえば、健康増進を口実に近づき、信頼を得て、怪しげな民間療法を繰り返しながら、家に居座ったり、財産を奪っていくようなケースもあります。本人も、本人の家族も被害を受けることも多々あります。
オセロの中島知子さんのケースは、占い師(自称霊能力者)の一家が中島さんの自宅に居座るケースでした。中島さんの前にも、一組の夫婦が同じ占い師から同様の被害にあっています。この被害者は手記を書いて出版しています。
自称霊能者に支配された561日:中島智子さんもかかった罠』 この本の最後には私もマインドコントロールの解説を書いていますが、個人カルトのやり口がわかる貴重な資料です。


暴力、洗脳、マインドコントロールの恐ろしさ:さらに深みへ

それまでどんなにすばらしい人でも、これらの支配の前で、自尊心を失い、また違法な行為や奇妙な行為をしていくことになります。巨大組織は、巧妙な技法を使います。個人カルトの支配者も、天才的な手法で人を支配します。
最初は、奇妙なこと、恐ろしいことでも、人は慣れていきます。おびえながらも、その行動は日常のものになっていきます。今回の事件も、地獄のような風景が繰り広げられたことでしょうが、殺人でさえ、繰り返されるようになってしまうのです。
そうなってしまえば、もうもとの世界には戻れません。さらに深い支配へと沈み込むのです。


逃げられなかったのか:支配からの脱出法

激しい支配下に置かれ、警察はなかなk「か民事に介入してくれず、解決は極めて困難だったでしょう。しかし、どこかにチャンスはあったはずです。警察等が動いてくれそうなチャンスを機敏に逃すことなく生かしていれば、被害はもう少し小さくてsんだかも知れません。
しかし、一般の人々の優しさや思いやりが邪魔をするkとがあります。たとえば、女に支配されている娘が父親を殴っている。それを警察に言うこともできるのですが、父は実行犯になってしまう娘をかばってしまいました。でも、ここで断固とした対応ができていればと悔やまれます。
たとえば、オセロの中島知子さんのケースでは、家賃不払いによる訴訟が事件解決の大きな一歩でした。実は、中島さんの両親と家主側の共同作戦でした。このときもしも、両親がそんなことをしては娘がかわいそうだと重い躊躇していれば、解決はさらに長引いていたでしょう。
チャンスがあれば、心を鬼にして、決断することも必要なのです。そして、もっとも望ましいのは、一番初めの段階で、はっきりと「ノー」ということでしょう。
個人カルトの被害者家族らは、解決策が見出せず途方にくれています。


主犯格の女性

子どものころから、かなりの傍若無人だったようです。通常は、大人になることには社会常識をわきまえてくるのですが、この女性は、相変わらず、暴力と脅して、周囲の人間から金を奪い、今回の事件へといたります。
本当なら、まだ子どものころに必要な治療教育が受けられていればと思います。また、成人した後も、何らかの組織等に入っていれば、ある程度は行動が統制され、ここまでの破滅的な自体にはならずに住んだでしょう。

カルト教団から家族や親友を守る法(心理学総合案内こころの散歩道)


みんなの力で

加害者になりそうな人も、被害者も、みんなの力で何とかしていければと思います。問題児の教育も、悲哀者の救出も一人ではできないのです。今回の大きな事件は、大変残念なことですが、このケースから、全国の個人カルト問題への対処が進むことを願っています。

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マインドコントロールの解き方を理解するための本
マインド・コントロールからの救出―愛する人を取り戻すために
(マインドコントロールの研究と脱会実践の第一人者ハッサンの本)
カルトからの脱会と回復のための手引き――〈必ず光が見えてくる〉本人・家族・相談者が対話を続けるために
日本脱カルト協会の十数年の活動の集大成。
マインド・コントロールとは何か
(日本におけるマインドコントロール研究の第一人者西田公昭先生の本)
 『カルト教団からわが子を守る法 』 (反カルト宗教緊急翻訳出版)
J.C.ロス、M.D.ランゴーニ 著  多賀幹子 訳 朝日新聞社 


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マインドコントロールに関する一般的な知識と予防法については、
当サイト内の 洗脳とマインドコントロールの心理学 をご覧下さい。

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マインド・コントロールとは何か
マインド・コントロールの恐怖



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