対米同時多発テロの犯罪心理。テロ(心の戦争)に負けないために。

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新潟青陵大(碓井真史) / こころの散歩道 /犯罪心理学/ アメリカ同時多発テロ9.12〜9.18

犯罪心理学:心の闇と光

アメリカ同時多発テロ
(テロの心理)

〜 「心の戦争」に負けないために 〜
2001.9.2

(このページがYAHOOのニューストピックスで紹介されました)

その2(続き).9.18 ・ その3.アメリカ炭疽菌問題の犯罪心理10.15

 

テロとは

 すでにみなさんご存知のように、アメリカで恐ろしいテロ事件が発生しました。民間旅客機が激突し、世界貿易センターの超高層ビルが崩壊。アメリカ国防省のペンタゴンも大きな被害を受けました。犠牲者は、数千人とも、1万人とも言われています。その恐ろしさを伝える映像は、世界中の人々に大きな衝撃を与えました。

 これはもう戦争と言えるかもしれません。あまりにも大きな出来事であり、通常の犯罪のように、犯人の動機やら心理やらをのんびり考えるべきものでもないかもしれません。

 今回のテロは、とてつもなく大きな被害を与えました。しかし、テロは、身体や物に被害を与えるだけではなく、私たちの心に被害を与えます。心への被害こそ、テロの本質かもしれません。

 佐渡龍己氏は、著書テロリズムとは何か (文春新書)(文春新書)の中で、テロリズムとは、人々に恐怖と不安を与えるために行われる「心の戦争」だと述べています。

 テロリズムが、身体や建物に対する武力行為というだけではなく、私たちの心を狙った心理戦争だとするなら、テロリズムと断固戦うためにも、私たちの心の問題も考えたいと思います。9.2

弱者としてのテロリスト


 「弱者としての」というのは、テロリストにも同情すべきだという意味ではありません。しかし、テロリズムは、弱者から強者への攻撃です。アメリカに対して軍事力や経済力で優位にたつ者がアメリカへのテロを行うことはありません。

 今回のテロリストも、テロの歴史上最大の被害を与えましたが、経済や軍事の力を使ってアメリカを屈服させることなど到底できない者です。

 そのような弱者の方法がテロです。彼らの方法は、物を壊し、人を殺すことでアメリカを征服するのではなく、アメリカを心理的に追い詰めようとしているのです。

恐怖と不安そして怒り

 今回のテロ被害は、外国人である私たちが見ても、全身が震えるような衝撃的なものでした。アメリカの皆さんはどれほど深い悲しみに陥っていることでしょう。直接被害を受けた被害者やご家族にとって、体や経済的な被害だけではなく、心の傷もとてつもなく大きいでしょう。

 テロは、政治家や軍事施設を対象にすることもありますが、今回のような民衆への無差別テロも多発しています。正規の戦争以上に、いつ自分たちが被害に合うかわかりません。

 現在、アメリカではいくつかの超高層ビルが閉鎖されています。直接被害を受けなかった人たちも、もしかしたら今度は自分達が狙われるかもしれないという不安をもっているでしょう。

 テロは場所を選ばず、対象を選ばず、終わりもありません。その恐怖と不安は人々の心を締め付けます。その結果、時にはテロリスト達の要求をのむことにもなってしまします。

 いつまでもテロの恐怖から逃れることができないと、民衆が政府に圧力をかけることもあります。テロリストの要求に応じるように政府に求めることもあるでしょう。第三世界では、恐怖と不安と憎しみのために、暴動が起こり、社会秩序が破壊されることもあります。

 激しい憎しみのために、政府が過剰な報復行動を起こすこともあるでしょう。また民衆がヒステリックになって、政府に報復攻撃を求めることもあるでしょう。しかし、過剰な報復行動は、国際世論の反発を招きます。人道上問題であるだけではなく、場合によっては国際社会がテロリスト側に同情することにもなりかねません。

心の戦争に勝つ

 テロリストは、政府や民衆に恐怖と不安を与え、脅すことによって、自分達の政治的目的を果たそうとします。心を痛めつけられた結果、秩序を失ったり、要求に応じたり、国際世論がついてこないほどの過剰反応をしてしまったら、テロリスト達の思う壺です。

 だから、テロリストに勝つとは、犯人側に報復したり、逮捕したりすることだけではなく、恐怖と不安と行き過ぎた復讐心に勝つことなのです。

大統領声明「アメリカの決意は砕けない」

 見事な演説です。まず、テロリストの心理攻撃には決して負けない、すでにアメリカ国民は勝っていると宣言します。
「これは我々の国家を混乱と恐怖に陥らせ、退かせようという狙いによる大量殺人だが、彼らはすでに失敗している。我々の国は強い。我々の偉大な国民は、偉大な国を守るため動き始めている。テロ行為は我が国で最も大きいビルの土台を揺らがすことはできても、アメリカの土台に手を触れることすらできない。鉄骨を砕くことはできても、米国の決意を骨抜きにすることはできない。」
そして、人間不信と怒りにつぶされそうになっている国民に、人間の光の部分を語りかけます。
「きょうわが国は、人間の性質の最悪の部分、邪悪さを目にした。だが、それに対したのは、救急隊員たちの勇敢さ、見ず知らずの人々や隣人のために献血などできることは何かないか申し出て来る人々の優しさという、米国の最良の部分だ。」
 続けて、アメリカ社会は問題なく機能しつづけていることを強調し、次に、テロリストたちとテロ集団を支援するものを必ず裁くと強調します。
 自由と民主主義のために戦いつづけるというこの演説は、感動的です。私も、大統領とともに祈りたいと思います。「死の陰の谷を行くときも、わたしは災いを恐れない。あなた(主なる神)がわたしと共にいてくださる」(聖書詩編23編)

歴史の転換点

 今回のテロは、大きな被害があったということにとどまらず、人類の歴史の大きな転換点になることすら考えられます。アメリカの一部報道には、「冷戦時代の終わりか」といった物騒な表現も見られます。
 いまだ犯人もわからない段階ですが、アメリカとイスラム世界との関係、中東情勢に大きな変化が起こるかもしれません。その変化が、不信と混乱と争いへの変化にならないことを心から祈っています。むしろ逆の意味で歴史の転換点となるように、人類の平和への大きな一歩となるように願って止みません。

 アメリカが、いつもいつも正義の戦いをしてきたとは思いません。プッシュ大統領の感動的な演説が、単なる打算的な演説ではなく、彼の本心であってほしいと思います。テロリストに対して、断固として戦う姿勢をとることは当然です。武器が必要となるときもあるでしょう。しかしそれでも、アメリカの威信を示すとは、強い武力を示すことではなく、本当の意味で、テロリストによる心への攻撃に勝つことだと思うのです。

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その3.アメリカ炭疽菌問題の犯罪心理10.15

悲しみに泣いているすべての人々のために祈ります。

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