新潟青陵大学:碓井真史-心理学総合案内こころの散歩道/ニュース/成人式
2001.1.11
2001.1.12 成人式 新成人大暴れ !? の 心理 2
2002.1.14 成人式 新成人大暴れの心理 2002年版
2003.1.9 成人式 新成人大暴れの心理 2003年版
今年2001年の成人式は、「大荒れ」と報道されています。高松市では、式を妨害した人たちを告訴する騒ぎにまでなっています。
もちろん、ここまで大騒ぎをする人は、ごく一部です。彼らの行動を、悪さをする「非行少年」の心理として考えてみましょう(彼らはもう法的には少年ではないけれど)。
注目されたい、かまってほしい、しかし正当な方法で目立つだけの力はない、そんなときに、彼らは手っ取り早く悪いことをして目立とうとします。ヒーローにはなれないけれど、「アンチヒーロー」にはなれるのです。
目立ちたいという気持ちの底にあるものは、愛されたいという思いです。「そんなにいやなら出席しなければいいのに」と、あるニュースキャスターがいっていましたが、そこが「子ども」なんですよねえ。
無視して出席しないわけではない、居眠りするのでもない、市に抗議したり、式を断固中止させようというわけでもない。出席はする、少しだけ(と本人は思っているど本当は行き過ぎた)悪ふざけをする。中学生ぐらいのワルにはよく見られる行動ですが。
ほんの一部のめちゃくちゃな人たちを見て、近ごろの「二十歳の連中は」なんて語るのは間違っています。普通の二十歳はそんなことはしないんですから。
ね。他の二十歳のみなさん、みなさんも、迷惑を受けた被害者だよね。
でも、本当にそれだけ? あなたもおしゃべりしたり、ケイタイ鳴らしたりしてなかった?
ピカピカの建物を平気で汚す人はなかなかいません。だんだん汚れてくると、ポイっとゴミを捨てる人も出てくるでしょう。
ざわついた会場内の雰囲気が、彼らの行為を心理的に後押ししたのです。
昔は、子どもの次は大人でした。
15歳で元服(成人)とか、「赤とんぼ」の歌にあるように「姉やは15で嫁に行き〜」といったぐいあい。それが社会が発展するにつれて、子どもの次は「青年」になりました。大人になるのを、社会が待ってくれているのです。この時期を「心理的モラトリアム」といいます(猶予期間という意味)。
モラトリアムは悪いことではありません。いろいろ考えたり、体験したり、勉強したりしながら、どんな職業につこうか、誰と結婚しようかと、大人になる準備ができます。
ところで、昔のモラトリアム青年は、強い「半人前意識」を持ち、はやく一人前の大人になりたいと思っていました。ところが、現代のモラトリアム青年達は、半人前意識などなく、自分の今の生活を当然だと思い、一生懸命生きている大人たちの生き方がばからしくさえ思ってしまいます。
青年達は、大人になることを望んでいません。うれしくありません。様々な調査によると、青年達の多くは大人になることを喜んではいないのです。
こんな思いと最近の成人式の諸問題とは無関係ではないでしょう。青年達の問題は確かにありますが、大人とになることに喜びを感じられない社会を作ってしまった大人たちの問題もあるでしょう。
高松市の市長さんも心配していたと語っていましたが、数日はやく行われた他市の成人式でうるさい新成人に腹を立てた市長がスピーチを途中でやめるということがありました。これ以外にも、成人式の前には、これまでに見られた「荒れる成人式」の様子がずいぶん報道されました。
まともな人は、報道をみて、「そんな非常識なことをやってはいけない」と思うのですが、しかし成人式妨害予備軍の人たちにとっては、正反対の効果があったでしょう。
「みんなやってる」「おれもやってもかまわない」「(「恥ずかしい」ではなく)カッコイイ!」
もしかしたら、報道を見ているうちに、自分たちもやってやろうと思い、酒ビンやクラッカーを用意したのかもしれません。
報道はもちろん意義のあるものです。問題は、どう報道するかです。悪ふざけをした人を喜ばしたり、予備軍を刺激するような報道をしてはいけません。
仲間の誰かが成人式に何かをやってやろうと言いだし、誰かが勢いづかせ、悪ふざけの計画がエスカレートしていったのかもしれません。
(一般的に集団討議は過激な方向に行きやすいものである(「リスキーシフト」する)ことが心理学的にわかっています。特にワルたちは、互いの目を気にしあって、ブレーキがきかなくなることがあります)。
ニュース23で、戦後最初の成人式を紹介していました。終戦まもないころ、物もなく、自信を失っている新成人たちにミカン一個を配ったそうです。きっと、心のこもった成人式だったのでしょう。
新潟県長岡市の成人式は、現在は5月に行われていますが、以前は雪深い1月に行われていました。会場へと向かうメインストリートの歩道も厚い雪で埋もれています。
成人式の前日、担当者は毎年徹夜して除雪をしたそうです。そして成人式の朝。振りそで姿の新成人は、草履を履いて、アスファルトが出た歩道を歩いて会場に入りました。
二十歳の人に言いたいことはいろいろありますが、でも、大人の側がもう一度、成人式の意味を考え直してもいいのではないでしょうか。単なる形式ではなく、本当にすばらしい成人式を企画して、それでも妨害しようというのなら、それこそその時には断固とした態度もよいでしょう。
これからの成人式をどうしようかと、みなさん考えているようです。マスコミで紹介されるような奇抜なアイデアではなくても、演出を工夫したり、運営方法を工夫して、効果を上げている市町村もあるようです。
成人式本来の意味を私たちみんなで考えたうえで、さまざまな工夫を凝らしたいと思います。行政も、市民も、マスコミも、新成人も、みんなで協力してね。うるさい新成人をどう静かにさせるかといった表面的で、同時に新成人をバカにしたような見方ではなくて。
*
新成人のみなさん。大人の社会へようこそ。
おめでとう。歓迎します。*
いやあ、えらそうなことを書きましたが、私自身、なんとなく大人かなあと思えたのは30歳をすぎてからかなあ...。心理学的にも青年期は延びている、つまり心理的に大人になるのは遅くなっていると考えられています。
それから、高松市が告訴した件ですが、間違ってはいないと思います。仕返しや見せしめでは困りますが。ところで、20歳に限らず30歳でも40歳でも不特定多数の人を集めたら、そりゃ中にはいろんな人がいるでしょうね。 あ、いま逮捕されたようです。
1.11. 19:00
新しい動きにわせてページを更新します。更新しました。1.12 新成人大暴れ !? の 心理2
*
☆ 当サイト内の関連ページ ☆
○成人式大暴れの心理2002
○「心理学入門」の中の こころの発達2(青年期)アイデンティティやモラトリアムの解説をしています。○「犯罪心理学」の中の 少年犯罪の心理 最近の凶悪少年事件のほかに、非行少年の心理なども説明しています。
などなど、心の散歩道:心理学総合案内は豊富なコンテンツで皆さまをお持ちしています。
2008年9月20日緊急発行 『誰でもいいから殺したかった! 追い詰められた青少年の心理』 |
2008年8月発行 『人間関係が上手くいく嘘の正しい使い方:ホンネとタテマエを自在に操る心理法則』 |
2000年 『なぜ少年は犯罪に走ったのか』 |
2001年 『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』 |
2000年 『なぜ少女は逃げなかったのか:続出する特異事件の心理学』 |
||
「誰でもいいから殺したかった青年は、誰でもいいから愛してほしかったのかもしれない。」 ☆愛される親になるための処方箋。 本書について(目次等) |
『ブクログ』書評「〜この逆説的かつ現実的な取り上げ方が非常に面白い。」 ・追い詰めない叱り方。上手な愛の伝え方。 本書について(目次等) |
bk1書評「本書は,犯罪に走った子ども達の内面に迫り,心理学的観点で綴っていること,しかも冷静に分析している点で異色であり,注目に値する。」 本書について | 「あなたは、子どもを体当たりで愛していますか?力いっぱい、抱きしめていますか?」 本書について | 「少女は逃げなかったのではなく、逃げられなかった。それでも少女は勇気と希望を失わなかった。」 本書について |
心の散歩道:心理学総合案内
アクセス数3000万の心理学定番サイト
| 心理学入門 | 社会心理学(対人心理学) | 心の癒し(いやし)・臨床心理学 | やる気の心理学 | マインドコントロール | ニュースの心理学的解説 | 自殺と自殺予防の心理学 | 犯罪心理学 ・ 少年犯罪の心理学(非行の心理) | 宗教と科学(心理学)| プロフィール・ 講演 | 心療内科 | 心理学リンク | 今日の心理学(エッセイ) | 掲示板 |